◇ 当添削例は、実際の句会(川越)で添削された例を「句会報」から抽出して、その一部を掲載しております。
◇ 句座では、ご指導の先生と共に、出席者がそれぞれの入選句について、一句ごとに鑑賞や合評を致します。
その中で、特に無点句について、推敲を考えます。この時間が最も勉強になり、「目から鱗」の楽しい時間でもあります。
【今月の添削例】 令和6年 12月 | ||
原句 | 遥拝の祈り抱えて山眠る | |
添削 | 遥拝の祈りを抱へ山眠る | |
・中七の「て」をはずしたい | ||
原句 | 冗談も笑顔の一つ春を待つ | |
添削 | 冗談に笑顔で応へ春を待つ | |
原句 | 気動車の旅頬杖と眠る山 | |
添削 | 気動車の旅の頬杖山眠る | |
原句 | 着ぶくれて浮世僅かに離れけり | |
添削 | 着ぶくれて僅かに浮世遠くせり | |
原句 | 千鳥きて喪中はがきの寂しさよ | |
添削 | 浜千鳥喪中はがきの届きけり | |
原句 | やきとり屋くるぶしを風すぎにけり | |
添削 | くるぶしを風のすぎゆくやきとり屋 | |
【今月の添削例】 令和6年 11月 | |||
原句 | さやさやと竹のざわめく初しぐれ | ||
添削 | 大寺の竹のさやぎや初しぐれ | ||
△さやさやとざわめくの重なりを回避し場所を入れてみる | |||
原句 | シリウスの下に靜けき都会の灯 | ||
添削 | シリウスの下に広がる都会の灯 | ||
原句 | すぢ雲の流れを見れば鼻寒し | ||
添削 | すぢ雲の流れを仰ぐ鼻寒し | ||
原句 | 狛犬に後を託して神の留守 | ||
添削① | 狛犬に後を託して神の旅 | ||
添削② | 狛犬に後を託せる神の留守 | ||
【その他】 | |||
原句 | ささやかなこころ祝ひや石蕗の花 | ||
「こころ祝ひ」とは、ことさら改まったことはせず、心持だけの祝いをすること、或いは心の中でよいことが起こるようにと祈ること。 広辞苑 |
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原句 | 作務の僧と秋の日和を述べ合へり | ||
推敲 | 秋晴を作務衣の僧と述べ合へり | ||
季語「秋日和」を間延びさせて「秋の日和」と使うことを回避。 | |||
【今月の添削例】 令和6年10月 | ||
原 句 | 水に映ゆる小さき秋を跨ぎけり | |
添 削 | 水に映ゆ小さき秋を跨ぎけり | |
原 句 | 蹲に紅葉の色を掬ひけり | |
添 削 | 蹲の紅葉の色を掬ひけり | |
原 句 | 通草捥ぐ記憶は古き里の山 | |
添 削 | 通草捥ぐ遠き記憶の里の山 | |
原 句 | 境内の古道に続く彼岸花 | |
添 削 | 境内をめぐる古道や彼岸花 | |
【今月の添削例】 令和6年9月 | |
原句 | 蹴り返す強きボールや秋の空 |
添削 | 蹴り返すボール高高秋の空 |
原句 | 走馬灯廻る記憶の幼き日 |
添削 | 走馬灯廻る幼き日の記憶 |
原句 | 蘭の香や日差しの粒子やはらかく |
添削 | やはらかき日差しの粒子蘭香る |
原句 | 名月や部屋の灯りを消し去らん |
添削 | 今日の月部屋の灯りを消して待つ |
原句 | 秋高し砂場の上を跳んでをり |
添削 | 秋高し砂場の上を跳ぶ子かな |
【今月の添削例】 令和6年 8月 | |||
原句 | 空 蝉 を 風 の 運 ぶ か 歩 道 橋 | ||
添削 | 空 蝉 を 風 運 び を り 歩 道 橋 | ||
原句 | 草 刈 し 草 を つ い ば む 雀 ど ち | ||
添削 | 刈 草 の 草 を つ い ば む 雀 ど ち | ||
原句 | 鈴 虫 の 二 声 鳴 き て 暮 れ ゆ き ぬ | ||
添削 | 鈴 虫 の 一 声 鳴 き て 暮 れ ゆ き ぬ | ||
原句 | 飛 び 石 に 鉢 植 ゑ 沿 ふ や 牽 牛 花 | ||
添削 | 飛 び 石 に 沿 ふ 鉢 植 ゑ の 牽 牛 花 | ||
【今月の添削例】 令和6年 7月 | ||
原句 | からうとの暗き室開く日の盛 | |
添削 | からうどの暗きを開く日の盛 | |
※からうどと「ど」が一般的。室は省略できる。 | ||
原句 | 蓮の花咲いて散り行く一夜かな | |
添削 | 蓮の花散り行く一夜三回忌 | |
※咲いては省略し、どのような一夜か記す | ||
原句 | 雨呼びて祭囃子のたかまれり | |
添削 | 雨を呼び祭囃子のたかまれり | |
※いかにも降り出しそうであれば添削句、すでに降っているのであれば原句の通り。 | ||
原句 | 天日干し不作の梅干並べ替え | |
添削 | 天日干し不作の梅を並べ替え | |
※「干し」と「干」と重複は避けたい | ||
【今月の添削例】 令和6年 6月 | ||
原 句 柿の花風なき朝もこぼれをり | ||
添 削 柿の花風なき朝をこぼれをり | ||
原 句 病葉の音ともなはず落ちにけり | ||
添 削 病葉の音ともならず落ちにけり | ||
原 句 葛餅も入る弁当介護食 | ||
添 削 葛餅の添へられてをり介護食 | ||
原 句 昨夜よりの雨一八の花出づる | ||
添 削 昨夜よりの雨一八の花ひらく | ||
原 句 どろんこの顔嬉嬉として植田かな | ||
添 削 どろんこの顔嬉嬉として田植かな | ||
【今月の添削例】 令和6年 5月 | ||
原 句 | 優勝のコールドゲーム夏立てり | |
添 削 | 決勝はコールドゲーム夏立てり | |
原 句 | 鯉幟並んで河を渡りけり | |
添 削 | 鯉幟谷川高く渡しけり | |
原 句 | みどり児のむつきを外し初夏の日へ | |
添 削 | みどり児のむつきを外す夏来たる | |
原 句 | 江戸切子窓に雨音鳴りにけり | |
添 削 | 玻璃窓に高き雨音江戸切子 | |
原 句 | 捨て畑に夕日の残り桐の花 | |
添 削 | 捨て畑や夕日の残る桐の花 | |
原 句 | 母の日やわずかに髪の白さかな | |
添 削 | 母の日の母に兆せる髪の白 | |
【今月の添削例】 令和6年 4月 | ||
原 句 | 芹を食む嚙み切る音の心地よさ | |
添 削 | 水芹を嚙み切る音の心地よさ | |
原 句 | 戦禍あり地震ありても咲く桜 | |
添 削 | 咲く桜戦禍も地震も乗り越えて | |
原 句 | 伊豆石の切り立つ池や花の庭 | |
添 削 | 伊豆石の切り立つ池や花の昼 | |
原 句 | 田起こしや棚田を包むエンジン音 | |
添 削 | 耕しの棚田を包むエンジン音 | |
原 句 | 波くづれ磯馴れの松の若緑 | |
添 削 | 大波のくづれ磯馴れの若緑 | |
【今月の添削例】 令和6年 3月 | ||
原 句 | 一人居に慣れてしまひし目刺焼く | |
添 削 | 一人居に慣れる暮らしや目刺焼く | |
原 句 | 鳥帰る旅へ誘ふ手紙かな | |
添 削 | 鳥帰る旅へ誘ふ山河かな | |
原 句 | 春風の揺らす白地の半のれん | |
添 削 | 春風や揺るる白地の半のれん | |
▽擬人化を避ける | ||
原 句 | 春暖や土間の明るさ薄暗さ | |
添 削 | 春暖や土間に明るさ薄暗さ | |
原 句 | 朧夜のブルースハープ気怠くて | |
添 削 | ブルースのハープ気怠き朧の夜 | |
▽語順 | ||
【今月の添削例】 令和6年 2月 | ||
原 句 | 湾岸のタワマン二月の光満つ | |
添 削 | 湾岸のタワーマンション風光る | |
▽中七の字余りの解消 | ||
原 句 | 日を溜める路傍の古仏良寛忌 | |
添 削 | 日を留める路辺の石仏良寛忌 | |
▽古仏は屋内の木彫を連想させるので | ||
原 句 | 神おはす山より出づる春の川 | |
添 削 | 神おはす山より出づる雪解川 | |
原 句 | 下見にも句作りのメモ春兆す | |
添 削 | 吟行の下見のメモや春兆す | |
原 句 | 春立や園児の子らの高き声 | |
添 削 | 春立や幼稚園児の高き声 | |
▽児と子が重なる | ||
【今月の添削例】 令和6年 1月 | |||
今月は、八王子句会500回記念句会が開催され、才野主宰から、少しコメントとして、添削をいただきましたので掲載いたします。 | |||
原 句 | 武蔵野の朝に初富士良く似合ふ | ||
添 削 | 初富士や武蔵野の夜の明けそめて | ||
「良く似合ふ」は要りません。取り合わせたことで、 「似合ふ」は分かりますから。 |
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原 句 | どんとの火閉じ込め活火山の様 | ||
添 削 | どんとの火こもりて活火山の様 | ||
原句のままですと「閉じ込め」の主語がありません。この句の場合は「閉じ込める」という他動詞を使わずに、自動詞で表現すれば上手くいきます。 | |||
原 句 | 臘梅の花いよよ透け艶めけり | ||
添 削① | 臘梅のいよよ透けくる夜明けかな | ||
添 削② | 楼の灯に臘梅いよよ透けきたる | ||
「臘梅」だけで「臘梅の花」の意味になります。 また「艶めけり」は要りません。自分の気持ちを直接表す言葉は俳句では使わない方が良いです。 |
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原 句 | 植込みに囀りかしまし寒雀 | ||
添 削 | 植込みに声かしましき寒雀 | ||
「囀り」は季語としても使われるので、避けた方が良いです。 | |||
原 句 | 手を振れば微笑み返す初鏡 | ||
添 削 | 微笑めば微笑み返す初鏡 | ||
句の内容からして、「微笑み」の言葉をくり返した方が良いです。 | |||
原 句 | お手つきの言の葉美しき歌留多かな | ||
添 削 | お手つきてふ言葉の美しき歌留多かな | ||
「お手つきの言の葉」が分かりませんでした。 「歌留多において字余りになっても「てふ」が必要でしょう。 |
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原 句 | 終点は山の彼方や冬の晴 | ||
添 削 | 終点は山の彼方や冬晴るる | ||
「冬の晴」と言うより「冬晴るる」の方がよく使われると思います。 | |||
原 句 | そろそろや隣の餅つき音の絶へ | ||
添 削 | 隣からそろそろ餅の来る気配 | ||
「そろそろや」が、何がそろそろなのかが分かりません。 例えば「隣での餅搗きの音が終わったから、そろそろお裾分けが来るころだろう」という意味なら、隣からそろそろ餅の来る気配でしょうか。なお「絶へ」は「絶え」です。 |
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原 句 | 窓開き富士を拝んで明の春 | ||
添 削 | 窓開き富士を拝む明の春 | ||
「拝んで」の「で」でリズムが弛んでいるように思います。 なお、「拝む」は「おろがむ」で読めば字数は合います。 |
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【今月の添削例】 令和5年 12月 | ||
原 句 | コロナ禍を乗り越えきたる年忘 | |
添 削 | コロナ禍を乗り越えけふの年忘 | |
原 句 | 早朝の居間の障子や鳥の声 | |
添 削 | 早朝の障子の明り鳥の声 | |
原 句 | はらはらと梢を濡らす初時雨 | |
添 削 | 武蔵野の梢を濡らす初時雨 | |
原 句 | 朝日さす庭の千両咲き初むる | |
添 削 | 朝明や庭の千両咲き初むる | |
【今月の添削例】 令和5年 11月 | ||
原 句 | 枝打の谺深山に行きわたる | |
添 削 | 枝打の谺深山を渡りけり | |
▽「を」として広がりを出す | ||
原 句 | 幾度も聞きしエチュード北風吹く夜 | |
添 削 | 幾度も聴くエチュードや北風吹く夜 | |
▽過去形を現在形に | ||
原 句 | 浮寝鳥映れる雲にまぎれけり | |
添 削 | 浮寝鳥水面の雲にまぎれけり | |
▽明確な景に | ||
原 句 | 枯葉舞ふ江戸の堀ゆくクルーズ船 | |
添 削 | クルーズの江戸のお堀や枯葉舞ふ | |
原 句 | 藁の香を残して田圃日が暮れる | |
添 削 | 新藁の香りを残し田の暮るる | |
▽新藁として季語をはっきり | ||
原 句 | 転た寝の母安らかや冬日入る | |
添 削 | 転た寝の母の背中へ冬日さす | |
【今月の添削例】 令和5年 10月 | ||
原 句 | 船頭の竹竿触るる谷紅葉 | |
添 削 | 船頭の竹竿触るる渓紅葉 | |
▽渓谷の景色に | ||
原 句 | 団栗をスマホを持たぬ子と拾ふ | |
添 削 | 団栗を拾ふスマホを知らぬ子と | |
▽語順を整える | ||
原 句 | 振り向きて笑ふ妻の手野菊かな | |
添 削 | 振り向きて笑ひし妻や野菊手に | |
【今月の添削例】 令和5年9月 | ||
原 句 | 八月十五日黙祷の球児 | |
添 削 | 黙祷の球児八月十五日 | |
原 句 | 桃食みし吾子の産毛や光をり | |
添 削 | 桃食める吾子の産毛の光をり | |
原 句 | おしろいの実は沈みゆく爪の先 | |
添 削 | おしろいの実へ沈みゆく爪の先 | |
原 句 | 秋草の帯をしめゆく茶の湯かな | |
添 削 | 秋草を踏み分けてゆく茶の湯かな | |
▽季語を形容詞にしない | ||
原 句 | 南吉の童話の舞台彼岸花 | |
添 削 | 南吉の童話の里の彼岸花 | |
【今月の添削例】 令5年 7月 | ||
原 句 | 遠くより友の声する夏の墓 | |
添 削 | 遠くより亡き友の声夏の墓 | |
原 句 | 虫干しや孫三人の助人かな | |
添 削 | 助人の孫三人や土用干 | |
原 句 | 波音に浜木綿の花長停車 | |
添 削 | 浜木綿の花波音の長停車 | |
原 句 | 原色の遊具児の居ぬ夏の黙 | |
添 削 | 原色の遊具残りし日の盛 | |
原 句 | 薄日さす海の底かも苔茂る | |
添 削 | 薄日さす海の底とも苔茂る | |
【今月の添削例】 令5年 6月 | ||
原 句 | 営巣や木のてつぺんの河鵜どち | |
添 削 | 風かよふ木のてつぺんの河鵜どち | |
▽「営巣」は「巣づくり」という春の季語があるので | ||
原 句 | 昆虫の亡骸蟻の列長し | |
添 削 | 昆虫の亡骸かかげ蟻の列 | |
原 句 | 滝音や眼鏡をおほふ水の粒 | |
添 削 | 滝しぶき眼鏡にかかりきたりけり | |
原 句 | ハンカチの花のゆらぎや老い心 | |
添 削 | ハンカチの花のゆらぎや老の日日 | |
原 句 | 紫陽花や雨がささやく薄化粧 | |
添 削 | 朝の雨きて紫陽花の薄化粧 | |
原 句 | 水の輪の音なく消へてあめんぼう | |
添 削 | 水の輪の消えたるところあめんぼう | |
原 句 | 紫陽花や園に鶴首の子がひとり | |
添 削 | 紫陽花や園に母待つ子がひとり | |
原 句 | 江の島を洗ふ潮騒風光る | |
添 削 | 江の島を洗ふ潮騒風薫る | |
▽「風光る」は、春季語 | ||
原 句 | 梅雨晴れの足の爪切る背中かな | |
添 削 | 梅雨晴間足の爪切る背中かな | |
【今月の添削例】 令和5年 5月 | ||
原 句 | むぎあきの頬をふちどる産毛かな | |
添 削 | むぎあきの幼の頬の産毛かな | |
原 句 | 飛び跳ねてじゃんけんしをり柏餅 | |
添 削 | 飛び跳ねてじゃんけんする子柏餅 | |
原 句 | 薫風やこのひと時の富士見坂 | |
添 削 | 薫風のこのひと時や富士見坂 | |
原 句 | 万緑や赤子乳房に食らいつく | |
添 削 | 万緑や赤子乳房に吸ひつきぬ | |
原 句 | 葉に遅れ牡丹揺れたり昼の庭 | |
添 削 | 葉に遅れ花の揺れたり庭牡丹 | |
原 句 | 水羊羹あの日も母の大笑ひ | |
添 削 | 水羊羹あの日の母の笑顔かな | |
原 句 | 芝刈の匂ひ漂ふショットかな | |
添 削 | 芝刈の匂へる空へティーショット | |
原 句 | わつと湧く筍飯のうまさかな | |
添 削 | わつと湧き筍飯を囲みけり | |
原 句 | 青鷺のかすみて耳に雨募る | |
添 削 | 青鷺の影を遠くに雨しきり | |
原 句 | 妻留守の立夏の家の静かなり | |
添削① | 妻留守の立夏の家の広さかな | |
添削② | 妻留守の立夏の風を入れにけり | |
原 句 | 取水堰越す水音や草若葉 | |
添 削 | 堰を越す水音高し草若葉 | |
原 句 | 風薫る古寺に土鳩の毛繕い | |
添 削 | 風薫る寺に土鳩の毛繕い | |
原 句 | 谷水をしきりに青く歯朶若葉 | |
添 削 | 谷水を青青として歯朶若葉 | |
【今月の添削例】 令和5年 4月 | ||
原 句 | アンパンを一口がぶり山笑ふ | |
添 削 | アンパンの一口甘し山笑ふ | |
原 句 | 春雷の無頼の響きわたりけり | |
添 削 | 春雷の天鼓の響きわたりけり | |
原 句 | 春の灯も何か寂しい蔵の街 | |
添 削 | 春灯ややがて寂しき蔵の街 | |
原 句 | 長男の視線は他所へしやぼん玉 | |
添 削 | 上の子の視線は他所へしやぼん玉 | |
原 句 | 野仏の一体と化し花見酒 | |
添 削 | 野仏と一体となり花見酒 | |
原 句 | 村落の花を遠目に新幹線 | |
添 削 | 村落の余花を遠目に新幹線 | |
原 句 | 初恋の胸のはじけるシャボン玉 | |
添 削 | 初恋のはじける思ひシャボン玉 | |
原 句 | 小手毬や今日のネクタイ黄色にす | |
添 削 | 小手毬や今日のネクタイ黄色とす | |
原 句 | 一人居の蛙の声も又楽し | |
添削① | 一人居の蛙の声を友として | |
添削② | 一人居の蛙の声を遠くして | |
原 句 | 人の世の盛衰の道残花かな | |
添 削 | 人の世の盛衰映す残花かな | |
【今月の添削例】 令和5年 3月 | ||
原 句 | 雲と波寄する相模の西行忌 | |
添 削 | 雲と波寄する相模や西行忌 | |
原 句 | 若き日の夢が目覚めて山笑ふ | |
添 削 | 若き日の夢の目覚めや山笑ふ | |
「が」は散文的 | ||
原 句 | 野遊びの園児散りぢり声乱れ | |
添 削 | 野遊びの園児の声の散りぢりに | |
原 句 | 寄せ書きのバレーボールや春入日 | |
添 削 | 寄せ書きのバレーボール部卒業す | |
原 句 | 鶯や声千金の散歩かな | |
添 削 | 鶯の声千金の散歩かな | |
原 句 | かすれ字の卒塔婆の音や薄霞 | |
添 削 | 風に鳴る古き卒塔婆や薄霞 | |
原 句 | 靖國の桜を訪ね砂利の道 | |
添 削 | 玉砂利の道靖國の桜かな | |
原 句 | 薄紅の混じる山里鐘霞む | |
添 削 | 薄紅の浮かぶ山里鐘霞む | |
【今月の添削例】 令和5年 2月 | ||
原 句 | 春日浴ぶベンチシートの客の背 | |
添 削 | 春日浴ぶシルバーシートの客の背 | |
原 句 | 東風の浜沖ゆく船の迅さかな | |
添 削 | 夕東風の沖ゆく船の迅さかな | |
原 句 | 故郷の房総の港東風吹けり | |
添 削 | 故郷の上総の港東風吹けり | |
原 句 | 橅の森朝日をかえす薄氷 | |
添 削 | 薄氷の朝日をかえす橅の森 | |
△重箱から、語順を換えて | ||
原 句 | 春の川もやひ結びの櫓こぎ舟 | |
添 削 | うららかやもやひ結びの櫓こぎ舟 | |
原 句 | 夕東風やかすかに海の匂ひけり | |
添 削 | 夕東風や海の匂ひのかすかなり | |
△ や・けりを手直し | ||
原 句 | 投げらるる棒の消えゆく春の川 | |
添 削 | 子の投げる棒の流るる春の川 | |
原 句 | 微睡て大きな欠伸猫の恋 | |
添 削 | 微睡て大きな欠伸孕み猫 | |
【今月の添削例】 令和5年1月 | ||
原 句 | 箸紙や筆太に書く墨の色 | |
添 削 | 箸紙へ書く筆太の墨の濃し | |
原 句 | 寒晴や羽音を残す雀かな | |
添 削 | 寒晴や羽音を残す群雀 | |
原 句 | 海風のかすかな揺れや野水仙 | |
添 削 | 海風のかすかに崖の野水仙 | |
原 句 | 線香の煙掬ひて初観音 | |
添 削 | 初観音香炉の煙掬ひけり | |
原 句 | 蜜柑捥ぎ孫三桁を数へ切る | |
添 削 | 蜜柑捥ぎ孫二桁を数へ切る | |
原 句 | 清められ掃かれて門の鳥総松 | |
添 削 | 清められ掃かれし門の鳥総松 | |
原 句 | 朝酒と駅伝もなく四日かな | |
添 削 | 朝酒も駅伝もなく四日かな | |
原 句 | 冬木道散歩の犬の赤い靴 | |
添 削 | 冬木道散歩の犬は赤い靴 | |
原 句 | 老々の集いの窓や水仙花 | |
添 削 | 老々の集いの窓辺水仙花 | |
原 句 | 仲見世の店のにぎはひ初観音 | |
添 削 | 仲見世のにぎはひを行く初観音 | |
【今月の添削例】令和4年12月 | ||
原 句 | 旅行かば冬霧かすむ榛名湖かな | |
添 削 | 榛名湖のかすむ冬霧旅なかば | |
原 句 | 一人居の安らぎの雨返り花 | |
添 削 | 一人居の雨の安らぎ返り花 | |
原 句 | 老木の根方を避けて雪の降る | |
添 削 | 老木の根方を残し雪降れり | |
原 句 | 八十路越え峠様々赤蜻蛉 | |
添 削 | 赤蜻蛉八十路の峠越えにけり | |
原 句 | 冬柏風に鴉の遊ぶさま | |
添 削 | 冬柏風に鴉の遊ぶ影 | |
「か」の韻をふむ | ||
原 句 | 風化する地蔵の顔へ冬の雨 | |
添 削 | 目鼻なき地蔵の顔へ冬の雨 | |
【今月の添削例】令和4年11月 | ||
原 句 | 小春日や水をたどれば龍の口 | |
添 削 | 小春日や水をあおげば龍の口 | |
原 句 | 下枝より空に向かひて冬ざるる | |
添 削 | 下枝より仰げる空や冬ざるる | |
原 句 | 微睡みて珈琲の香や冬薔薇 | |
添 削 | 冬薔薇珈琲の香に微睡みぬ | |
原 句 | 上流に片足掛ける冬の虹 | |
添 削 | 多摩川に片足掛ける冬の虹 | |
原 句 | 新蕎麦を打つや水車の回りけり | |
添 削 | 新蕎麦を打つて水車の回りけり | |
原 句 | 冬うらら水面の光うつろふ葉 | |
添 削 | 冬うらら水かげろふの松の幹 | |
原 句 | 日本海海の青さや枯薄 | |
添 削 | 花薄波の青さの日本海 | |
原 句 | 預かりし子偽薬に眠る小夜時雨 | |
添 削 | 幼子の偽薬に眠る小夜時雨 | |
原 句 | 要支援受けて寂しや冬隣 | |
添 削 | 要支援の認定受けて冬隣 | |
原 句 | あびらうんけん文化の日の御開扉 | |
添 削 | 文化の日のあびらうんけん御開帳 | |
原 句 | 三陸の海のアルプスゆりかもめ | |
添 削 | 三陸のリアスの海やゆりかもめ | |
原 句 | 晩節の笑みの眉開く冬の虹 | |
添 削 | 晩節の眉間の笑みや冬の虹 | |
【今月の添削例】令和4年10月 | ||
原 句 | 菓子箱の団栗転び甲斐の里 | |
添 削 | 空き箱に転ぶ団栗甲斐の里 | |
原 句 | 干柿の影を映せし硝子窓 | |
添 削 | 干柿の影の映れる硝子窓 | |
原 句 | 団栗や屋根を横ぎる米軍機 | |
添 削 | 団栗の降る屋根過ぎる米軍機 | |
原 句 | 外に出よと妻の呼ぶ声月の夜 | |
添 削 | 庭先に妻の呼ぶ声月の夜 | |
▽有名な句と重ならないように | ||
原 句 | 奥飛騨路湯けむりの上天の川 | |
添 削 | 奥飛騨の湯けむり立つや天の川 | |
原 句 | 富士高し裾野平らに葡萄棚 | |
添 削 | 富士山の裾野平らに葡萄棚 | |
原 句 | 猪垣の門扉を開けて札所道 | |
添 削 | 猪垣の扉を開けて札所道 | |
原 句 | 故郷の水香りす梨を剥く | |
添 削 | 故郷の水の香りの梨を剥く | |
原 句 | 芋の露まるく転がり光落つ | |
添 削 | 芋の露風に転がり光落つ | |
【今月の添削例】 令和4年 9月 | |||
原 句 | 狛犬に秋の蛙に雨の粒 | ||
添 削 | 狛犬に蛙に秋の雨の粒 | ||
原 句 | 秋空や暮れゆく藍の色深し | ||
添 削 | 藍の色深め秋空暮れゆけり | ||
原 句 | 山裾の風や秋七草の道 | ||
添 削 | 山裾の秋七草の風の道 | ||
原 句 | 秋祭り誘い太鼓に急ぎ足 | ||
添 削 | 秋祭誘ひ太鼓に急ぎ足 | ||
原 句 | 朽ちてなほ威厳を保つ案山子かな | ||
添 削 | 朽ちてなほ真つ直ぐに立つ案山子かな | ||
原 句 | 秋の虹置き外つ国の女王逝く | ||
添 削 | 秋の虹立つ外つ国の女王逝く | ||
原 句 | 桐の実を透かして山の空の紺 | ||
添 削 | 桐の実を残して山の空の紺 | ||
原 句 | 秋嶺や夕暮れ浅きシルエット | ||
添 削 | 夕暮れの浅き影なす秋の嶺 | ||
【今月の添削例】令和4年7月 | |
原 句 藤の弦何を掴まん風そよぐ | |
添 削 藤弦の何を掴まん夏の風 | |
⇒ 原句・藤弦は無季。藤、藤棚は春季語 | |
原 句 阿波踊り三味線抱く孫の連 | |
添 削 阿波踊り三味線を弾く孫の連 | |
原 句 沖へ行く船影一つ夏夕焼 | |
添 削 沖を行く船影一つ大夕焼 | |
⇒ 夕焼は夏季語 | |
原 句 路地裏のすね毛さはさは蛍草 | |
添 削 路地裏にさはさは揺るる蛍草 | |
原 句 木漏れ日の木の葉ゆらゆら影涼し | |
添 削 木漏れ日の葉影ゆらゆら涼しくて | |
⇒ 木の葉は冬季語 | |
原 句 夜も昼も祇園まつりの同期会 | |
添 削 昼も夜も祇園まつりの同期会 | |
⇒ 時の流れのままに | |
原 句 京遊び鴨の流れの夕涼み | |
添 削 京に来て川の流れの夕涼み | |
原 句 爽やかなお下げの少女背に妹を | |
添 削 爽やかなお下げの少女背に妹 | |
原 句 海底の高速を経て青田道 | |
添 削 海底の高速を抜け青田道 | |
⇒ 中七「経て」には理屈が入る | |
原 句 ひとりゐのはるけかりける夕焼かな | |
添 削 ひとりゐのはるかなりける夕焼かな | |
⇒ 原句中七 文法的に間違いないが・・・ | |
原 句 吹き矢会命中音や夏を切る | |
添 削 命中の吹き矢の音や夏を切る | |
原 句 向日葵や天衣無縫と人の言ひ | |
添 削 向日葵の天衣無縫と言はれけり | |
原 句 ヴィオロンの沁みる調べや夏の宵 | |
添 削 ヴィオロンの調べ沁みるや夏の宵 | |
原 句 私はショパンと妻の夕端居 | |
添 削 我妻はショパンが好きと夕端居 | |
原 句 父の日や娘好みのジーパン屋 | |
添 削 父の日の娘の選ぶジーパン屋 | |
原 句 暑き日を忘れてピカソ画集かな | |
添 削 暑き日に開くピカソの画集かな | |
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