やまびこ・私の好きな一句


読者が選ぶ今月の感銘、共感した一句の上位句をピックアップしています。

  令和6年 5月号    
  父母のしらぬ傘寿や暮の秋 中山 仙命  
  まだ成せる事のあるはず天高し 坂戸 啓子  
  小雪や久しく鳴らぬ黒電話 𠮷本 海男  
  父と子とあのねの話初冬の湯 高橋 良精  
  老いて尚学ぶ家事あり今朝の冬 坂井 俊江  
       
       
  令和6年 4月号  
  思ひ出に始まる母と子の夜長 北尾 鈴枝
  表札に夫の筆あと秋深し 甲斐 梅子
  父母こゆる齢いただき今日の月 望月 郁子
     
     
  令和6年 3月号  
  たんたんと流るる暮し走馬灯 上達 久子
  花芒さみしきときは野を歩む 高杉みどり
  肩車の小さき手の捥ぐ林檎かな 須﨑咲久子
     
     
  令和6年 2月号    
  武蔵野にふくらむ入日橋涼み 中野 東音  
  走馬灯みんな回つてみんな影 亀山利里子  
  さらさらと風の文字生む稲田かな 中谷 廣平  
       
       
  令和6年 1月号  
  紫蘇もんで生命線の染まりけり 山下 千代
     
     
  令和5年 12月号  
  月下美人月の色してひらきゐる 北尾 きぬ
  あるがまま生きるは難し濃あぢさゐ 甲斐 梅子
  俎板の音にも夏のきてをりぬ 山下 千代
  羽虫すら潰せぬ指よ沖縄忌 中島 佳代
     
     
  令和5年 11月号  
  日を水のごとくに湛え柿若葉 橋本 爽見
  捨てきれぬものに埋もれて更衣 譲尾三枝子
  百姓のまねして余生茄子を植う 吉瀬 秀子
  米粒が星になる朝花南天 矢倉 美和
     
     
  令和5年 10月号  
  春風もまぜて田んぼのにぎり飯 梅田喜美恵
  亀鳴くや親より永く生きてをり 小野田紀久子
  山笑ふ野仏の手に五円玉 桜井 京子
     
     
  令和5年 9月号  
  黒髪をゴムで束ねて卒業す 中村 優江
  紙風船言えぬ言葉を吹き入れて 中谷 廣平
  蛙鳴く私の妻を呼ぶ如く 𠮷本 海男
  老人と老犬とゐて春眠し 森本 隆を
  マフラーの中なら好きと言へるのに 島本 方城
  母逝きし後のしづけさ春の雨 𠮷田 鈴子
     
     
  令和5年 8月号  
  早春の日差しをすくふオールかな 中島 勝彦
  菜の花に巨船ゆつたり浮き沈み 田中 京子
  うちの子になる運命の子猫かな 大野布美子
     
     
  令和5年 7月号  
  みちのくに不老不死の湯雁供養 久留宮 怜
  一病と和して闘ひ去年今年 橋本 爽見
  蒼天へ透く蠟梅の香りけり 須﨑咲久子
  霜柱踏むや地球の窪む音 山根 征子
     
     
  令和5年 6月号  
  米寿越す我に夢あり日記買ふ        池内千恵子
  ままごとのかかあ天下や木の実飯      島本 方城
 
玄関の大きなこけし雪の宿         山本そよ女
 
惠弘尼の太き筆跡山眠る          磯部 洋子
     
     
  令和5年 5月号  
  死はいつも身近にありて煮大根 橋本 爽見
  老医師の一言やさし冬銀河 村田 近子
  一葉落つ時の流れをゆらしつつ 中島 勝彦
  逝きし人の写真見直す夜の長し 千代 博女
  境内の光あつめて銀杏散る 村田 近子
  冬落暉あす閉店の文具店 横川 節
     
     
  令和5年 4月号  
  ふるさとへ各駅停車花すすき 中野 東音
  白菊を活けて微かな風を知り 高杉みどり
  余生とは今生きること大花野 桜井 京子
  山からの風の乗せくる秋の声 北尾 きぬ
  路地裏に昔をさがす秋の暮 光畑あや子
     
     
  令和5年 3月号  
  人愛しひとに愛され秋深む 伊藤 道子
  くつきりと雲寄せつけず今日の月 貴志 治子
  玉入れの玉は赤白天高し 中村 優江
  句を学ぶ一人ひとりの良夜かな 橋本 爽見
  猫の目と出あふ抜け道星月夜 大野布美子
  同年の患者親しき秋の窓 高橋 浅子
  名月を追ひかけて行く列車かな 平林 敬子
     
     
  令和5年 2月号  
  砂浜の砂を均して秋の風 吉瀬 秀子
  夢あらば老いも青春今日の月 中谷 廣平
     
     
令和5年 1月号  
炎天や影は歩幅をはみ出さず 梅原 清次
茄子漬の紫紺に染まる小さき幸 吉岡 杏花
千体の佛の中にゐて涼し 村田 近子
アリスまだ戻れぬ頁明易し 大野布美子
朝まだき山は濡れをりほととぎす 相良 研二
墓洗ふ寺解散を詫びながら 出口 凉子
   
   
令和4年 12月号  
合歓の花やさしい人になりに行く 磯部 洋子
吊橋を引つぱつてをり蜘蛛の糸 橋本 爽見
日盛りをおろおろ賢治にはなれず 中野 東音
明け易しこの世に長居して飽きず 森本 隆を
   
   
令和4年 11月号  
捩花を咲かせて婆の反抗期 譲尾三枝子
風薫る心の通ふ人のゐて 守屋 和子
夏の雲摩文仁の丘の鉄の雨 松川ともはる
   
   
令和4年 10月号  
藤房や風のもつれを風のとく 北尾 きぬ
ゆく雲に一句のそだつ暮春かな 北尾 きぬ
余命など人ごととして青菜飯 橋本 爽見
野仏の石にかへるやすみれ草 山本そよ女
逃げ水を追つてハーレーダビッドソン 萩原 胡蝶
この家のものにござると軒燕 横川 節
   
   
令和4年 9月号  
水紋は風のあしあと春の池 大野布美子
タクシーの隠れて休む花の昼 中山 仙命
大樹の枝もろともに剪定す 町田 珠子
   
   
令和4年 8月号  
手のひらにつつむ命や寒卵 中島 勝彦
ただいまの声一人づつ日脚伸ぶ 梅原 清次
雪形の駒痩せてゆく遠嶺かな 久留宮 怜
山里に古代の神や木の根開く 中村 優江
俳縁を大事に菊の根分かな 村田 近子
告白はしてみたかりき囀れり 服部 史子
蒼海へなだるる崖の野水仙 須﨑咲久子
   
令和4年 7月号  
靴下買ひ寒卵買ひ母見舞ふ 山本知恵子
湯たんぽは母の遺品や膝に抱く 中村 優江
透きとほる朝の静寂や梅ひらく 甲斐 梅子
   

令和4年 6月号

 

 
かたくなになってはゐぬか花八つ手 橋本 爽見
冬ざれや五百羅漢の黙五百 中島 勝彦
大根煮て余生楽しむ心持 竹内 久子
生きて居ることが仕事よ日向ぼこ 山下 千代
   

令和4年 5月号

 

 
祈るとは今生きること秋終わる 吉岡 杏花
大熊手見上ぐる人を分け行きぬ 中島 勝彦
声明の揃ふ静かさ十夜寺 北村勢津子
行く秋や流れのごとく年重ね 小野田紀久子
湧き水の砂の踊りや小六月 中畑 耕
小夜時雨写真の母の聞き上手 野島 玉惠
   

令和4年 4月号

 

 
十三夜日本一の妻は亡く 橋本 爽見
コスモスの風や畝傍へ香具山へ 池田 洋子
煙なき暮しになれてさんま焼く 谷田アイ子
   

令和4年 3月号

 

 
四五軒の里を彼方にそばの花 貴志 治子
露けしやとにもかくにも米寿越え 橋本 爽見
ひぐらしや若狭へ続く十八里 山本そよ女
   

令和4年 2月号

 

 
老ゆるとは知恵を積むこと竹の春 吉岡 杏花
立秋やどこへも行かぬ紅をさす 中村 優江
かなかなの息ととのへる間合かな 中島 勝彦
終戦日空の青さをくちぐちに 松尾 憲勝
初めての句会へ秋の橋渡る 塩路けい子
   

令和4年 1月号

 

 
花茣蓙の花を枕のひと寝入り 大野布美子
どこまでも自転車でゆく夏休み 寺崎 智子