☆「夕星抄」は毎月約1,300句の中から、主宰により、選ばれた32句です。
☆「夕星抄余沢」は、夕星抄の中から、主宰による鑑賞が記された句となります。 サブページをご覧ください。
☆「やまびこ・私の好きな一句」は、会員読者が一番感銘、共感した句を選んでいます。上位の句を掲載しています。
令和5年 5月号 | ||
繭玉のにぎはひ部屋を寂しうす 福田 圧知 | ||
みちのくに不老不死の湯雁供養 久留宮 怜 | ||
善き顔と夢を持ち寄る初句会 島本 方城 | ||
山彦のひろがる空や梅探る 杉山 通幸 | ||
実朝の札は取りたき歌留多かな 中山 仙命 | ||
天地もみやびの京に初松籟 松尾 苳生 | ||
お囃子のひびく明神町二日 梅原 清次 | ||
見るだけの畑となりて初日さす 山下 千代 | ||
風惑ふ水仙を吹き吾を吹き 清水山女魚 | ||
麦の芽のはや風知りて日を返す 大森 收子 | ||
霊峰の凍滝に入る光かな 島松 岳 | ||
筑波嶺の山並はるか冬の虹 鈴木 利博 | ||
二十指をむすんでひらく冬の朝 鵜沼 龍司 | ||
山眠る峠の茶屋の灯も絶えて 武田 捨弘 | ||
痩せてなほ心和ます雪だるま 田中 睦美 | ||
会葬の帰路に出会ふや冬桜 中森 敏子 | ||
蒼天へ透く臘梅の香りけり 須﨑咲久子 | ||
冬の蠅無用の艶を持ち歩く 中畑 恵 | ||
どんど焼朝を賑はふ町内会 山本 信儀 | ||
的を射て笑顔にもどる弓始 本多ひさ女 | ||
霜柱踏むや地球の窪む音 山根 征子 | ||
楮干す白き山里良く晴れて 山岡 千晶 | ||
煮凝や詫びねばならぬ友のをり 中島 文夫 | ||
開演待つ白き譜面の淑気かな 柴田久美子 | ||
図子抜けて鼓の響き松の内 塩路 桂風 | ||
あれこれと鞄に詰めて春を待つ 平林 敬子 | ||
上賀茂の神馬を撫でる初松籟 山村 幸子 | ||
裸婦像を雪こまやかに包み降る 中間晋一郎 | ||
助手席の白木の箱や冬深し 森柾 光央 | ||
オレンジも黄も好きな色毛糸編む 長野 泰子 | ||
青い目のハスキー犬も寒の入 二見 歌蓮 | ||
七草の静かな朝餉又ふたり 廣田眞理子 | ||
令和5年 4月号 | ||
ふと気づき日記にしるす開戦日 名島 靖子 | ||
キックボード木の葉時雨を突つ切つて 上達 久子 | ||
独り居の灯を煌煌と毛糸あむ 讓尾三枝子 | ||
風を呼ぶ力残して枯尾花 須藤 篤子 | ||
捨てきれぬアルバム繰りて小春の日 川西万智子 | ||
玄関の大きなこけし雪の宿 山本そよ女 | ||
眠らざるもの懐に山眠る 西田 幸江 | ||
加太岬小春の空に舞ふドローン 福田真生子 | ||
木枯や歪みて廻るレコード盤 西川 豊子 | ||
駅に降り京の寒さにほつとして 池田 小鈴 | ||
綾とりの橋をかけたる孫と祖母 吉瀬 秀子 | ||
落葉踏む大地の声を聞きながら 塩出 翠 | ||
人生の旅の途中や納め句座 桜井 京子 | ||
近江路を絹のひかりの冬芒 西川 静風 | ||
夫想ふ幾歳月や霜の花 森 君代 | ||
冬夕焼我の背に星ひとつ 日野 満子 | ||
はからずも臘八に粥すすりけり 青木 謙三 | ||
背を見せて農夫一人の焚火かな 國友 淳子 | ||
日に坐して目の無き達磨年暮るる 市川 幸子 | ||
過ぎし日の苦労もうすれ古日記 出口 凉子 | ||
年用意終へし神苑鎮もれり 藤原 敏子 | ||
裸木に日矢を通して落暉かな 村岡 和夫 | ||
一年の思ひ巡らし聖菓焼く 櫻岡 孝子 | ||
金色の香の柚子湯浴ぶ白髪かな 長澤 曈生 | ||
樅の木にも台詞のありて聖夜劇 新谷 雄彦 | ||
モノクロの庭山茶花の散り急ぐ 佐藤 洋子 | ||
切株に負けぬ齢の日向ぼこ 野島 玉惠 | ||
捨てるには惜しき端切れよ一葉忌 望月 郁子 | ||
飾り窓ポインセチアの自己主張 奥田 清子 | ||
クリスマス生後五日の孫を抱く 小畑 順子 | ||
ゆらゆらと水路の魚も日向ぼこ 播磨 京子 | ||
日溜りの母ちやん床屋年の暮 水科 博光 | ||
令和5年 3月号 | ||
死はいつも身近にありて煮大根 橋本 爽見 | ||
逝きし人の写真見直す夜の長し 千代 博女 | ||
三万日生きて他愛もなき秋思 森本 隆を | ||
境内の光あつめて銀杏散る 村田 近子 | ||
一刷毛の雲あり空は秋の青 新井悠紀代 | ||
よく眠る母の呼吸や冬うらら 𠮷田 鈴子 | ||
猫の尻はたきひとりの日向ぼこ 北尾 美幸 | ||
ぽつり点く町屋の明かり初時雨 相良 研二 | ||
沢庵を炊いて昭和をなつかしむ 籔下 美枝 | ||
木の実降る森に夕日の迫りけり 山田 正弘 | ||
秋日和卒寿も過ぎて白寿迄 青木 テル | ||
蹲踞を磨き上げたる小春かな 馬場 久恵 | ||
夕空の幽さに残す木守柿 太田 稔 | ||
冬落暉あす閉店の文具店 横川 節 | ||
井戸水の弾けてゐたり芋洗ふ 河村 里子 | ||
綿虫の風に逆らひ寄り添ひ来 泉 葵堂 | ||
鐘六つ撞かれて朝の花八手 中田 定慧 | ||
鴨鳴きて川面の茜薄れゆく 田中 美樹 | ||
前通る人に声かけ日向ぼこ 戸田孝一郎 | ||
ボサノバの似合ふ居酒屋秋ふかし 柳 爽恵 | ||
小春日や直哉旧居のガラス窓 田辺 正和 | ||
森の中葉擦れの音に冬日さす 石原 盛美 | ||
つまづきし石の小ささやそぞろ寒 田中 節子 | ||
菜箸のすうつと刺さる煮大根 寺崎 智子 | ||
裸木となりなほ高さ競ひけり 伊藤 泰山 | ||
色見草かき分け登山電車行く 鈴木とみ子 | ||
奥嵯峨をめぐる畦道初しぐれ 中間 一司 | ||
凍星の光に触れる肌かな 松田 悦正 | ||
落葉踏む一人の時を楽しめり 田中 せつ | ||
爪引けるギターの調べ冬に入る 日比野晶子 | ||
チャルメラは昭和の音色冬の夜 栁沢 耕憲 | ||
図書館の絵本コーナー冬うらら 井上 恵子 | ||
令和5年 2月号 | ||
ふるさとへ各駅停車花すすき 中野 東音 | ||
山からの風の乗せくる秋の声 北尾 きぬ | ||
白菊を活けて微かな風を知り 髙杉みどり | ||
歌麿のをんなの憂ひ月夜茸 松尾 憲勝 | ||
秋の海浄土ヶ浜に石を積み 松川ともはる | ||
コスモスの畑へ風の渦幾重 池田 洋子 | ||
捨てきれぬ程のものなく冬隣 益田 富治 | ||
月光の雫垂るるや斜張橋 坂谷ゆふし | ||
手を伸べて触るる蛇笏の芒かな 中畑 耕 | ||
路地裏に昔をさがす秋の暮 光畑あや子 | ||
輝ける雲に乗せたる秋思かな 三村 昌子 | ||
小栗栖は終の住処よ秋日和 石堂 初枝 | ||
秋暮れて古里を恋ふ夜汽車の灯 山田 和江 | ||
プロレスも落語も好きで古酒の夜 石井 紫陽 | ||
手を挙げて淋しいと書く秋の空 松井 朱實 | ||
この在に住みて幾年刈田風 森本 安恵 | ||
旧道に並ぶ石仏赤のまま 鵜飼 三郎 | ||
紅葉晴れ耳で風読む牧の馬 中谷 廣平 | ||
橅の森落葉の下を忘れ水 中山 克彦 | ||
四方の風受けてあしらふ芒原 川上 桂子 | ||
皆駅へ駅へと朝の落葉道 中澤 朋子 | ||
秋蝶やそつと窓辺に翅ひらく 椎名 陽子 | ||
鹿の声応ふる声のなかりけり 新庄 泰子 | ||
瓢には瓢の思ひあるならむ 舟木 轍魚 | ||
晴天を右岸に寄せて秋の川 東山美智子 | ||
欄干の花紋に翳り色葉散る 小倉 和子 | ||
木守柿空に孤高の風そよぐ 篠田 裕司 | ||
秋雨や鉄平石の錆の色 坂井 俊江 | ||
追悼の演説沁むや秋の雨 渡辺 秀峰 | ||
消えかかる線引き直す運動会 肥沼 孝明 | ||
サックスが泣きて銀座の夜長かな 龍川游楽蝶 | ||
名月の光の底に森眠る 髙橋 賀代 | ||
令和5年 1月号 | |
くつきりと雲寄せつけず今日の月 貴志 治子 | |
玉入れの球は赤白天高し 中村 優江 | |
晩年の奇しき縁や百日紅 守屋 和子 | |
ファッション誌開けば届く萩の風 北尾 鈴枝 | |
人愛しひとに愛され秋深む 伊藤 道子 | |
葛の葉の虜となりて家二軒 甲斐 梅子 | |
誰も居ぬ秋の砂浜きゆつと泣く 田中 京子 | |
乱れ萩括れば一枝残りけり 小野田紀久子 | |
誰を待つ訳でもなくて花野道 亀山利里子 | |
ひとひらの雲を浮かべて天高し 岡村祐枝女 | |
青空のあくまで高く敗戦忌 石浜 邦弘 | |
物影のみな淡くなり秋彼岸 太田 朋子 | |
キャラバンの迷はず進む星月夜 萩原 胡蝶 | |
頂は白雲の中豊の秋 秋山 満子 | |
同年の患者親しき秋の窓 高橋 浅子 | |
朝露を蹴散らし始動コンバイン 田中 恒子 | |
長子ゐて末つ子のゐて榠樝の実 中畑 恵 | |
丁寧に水加減して今年米 西澤 照子 | |
鮭のぼる川滔滔と日を返し 柴田久美子 | |
初秋の波は日差しを紡ぎをり 小國 裕美 | |
離宮田の稲穂ゆるるや遠比叡 岡田 うみ | |
休暇明カッターシャツの輝きて 中島 三治 | |
秋風に松を残して庭師去ぬ 久保木倫子 | |
老木の洞の深さや虫の闇 澤田 治子 | |
名月を追ひかけて行く列車かな 平林 敬子 | |
朝霧の包む城跡一揆の碑 今泉 藤子 | |
新米の粒を立たせる土鍋炊き 梶本 圭子 | |
秋祭誘ひ太鼓に急ぎ足 行木 信夫 | |
ここからは下る坂道草の花 三宅稀三郎 | |
枝切りて空整ひぬ庭の秋 板谷つとむ | |
秋蝶のつと目の前にたたら踏む 加藤 美沙 | |
山寺の鐘しづもりて月見酒 髙橋 能美 | |
令和4年 12月号 | |
風鈴に誘はれ露地に迷ひ入る 中島 勝彦 | |
残されて仏へ炊きし零余子飯 北村勢津子 | |
みち潮の川遡る晩夏光 久留宮 怜 | |
夏燕造り酒屋の若杜氏 中山 仙命 | |
天水の満満にゆれ盆の月 町田 珠子 | |
人の輪のやがて踊の輪になりぬ 大野布美子 | |
揚花火終はり独りと気付きけり 山下 千代 | |
秋澄むや山ふところにベーカリー 髙橋 良精 | |
立秋や期限切れたるパスポート 山本そよ女 | |
葦原に波よ隅田の屋形船 坂戸 啓子 | |
落蝉を拾うて我を想ふなり 岡田 慶子 | |
一天に蕭白の龍鱗雲 梅原 惠子 | |
白芙蓉咲きたる峡の夜明けかな 大森 收子 | |
砂浜の砂を均して秋の風 吉瀬 秀子 | |
畳紙に姉の面影土用干 谷田アイ子 | |
つくつくし兵士の墓の林立す 間部 弘子 | |
青田波千の棚田を駆け登る 須﨑咲久子 | |
新涼や頬に腕に首筋に 天野 苺 | |
蜩や最終バスが出ると言ふ 梅田喜美惠 | |
青葉して千古を今に古墳群 岡本 和男 | |
一湾に架かる大橋秋燕 藤原 敏子 | |
ワクチンを打ちし夕暮れあきつ増ゆ 上田 古奈 | |
山風に遅れて揺るる秋簾 増田多喜子 | |
紅色に筆先ほどの蓮ふふむ 奥本伊都子 | |
タクシーに小字を告げて帰省かな 和田 秀穂 | |
終業のチャイム秋めく町工場 水科 博光 | |
朝凪の大河こぎゆく小舟かな 藤沢 道子 | |
海からの風の小径や盆の月 中島 文夫 | |
不器量と書き添へてある茄子届く 田端加代子 | |
新涼やジェットフォイルの発つ港 野島 玉惠 | |
語らひし卓に季寄せと秋思かな 新谷 雄彦 | |
固く髪結ひたる朝や原爆忌 仲野 由美 | |
令和4年 11月号 | |
茄子漬の紫紺に染まる小さき幸 吉岡 杏花 | |
ひまはりの果てなく続く旅愁かな 上達 久子 | |
諾へば老いは易きよみちをしへ 福田 圧知 | |
読み掛けのページ探しぬ昼寝覚 島本 方城 | |
蝉のこゑ杜を大きく揺すりけり 杉山 通幸 | |
炎天や影は歩幅をはみ出さず 梅原 清次 | |
図書館の卓に置きある夏帽子 清水山女魚 | |
かたつむり角は悲しきそぶり見せ 西田 幸江 | |
虹消えてふと故郷のこと憶ふ 山田 正弘 | |
家毀つ音はたと止み夕涼し 森田 真弓 | |
林間に四葩波打つ三室戸寺 伯耆 惟之 | |
かたはらに居てほしい人夏の宵 隅山 久代 | |
閻王の射る眼光や酷暑中 森 君代 | |
時計草思ひ思ひの時刻む 田中 君江 | |
青鷺の行きて夕闇深まれり 中田 定慧 | |
炎暑へと駆け出し海の子となりぬ 中村 文香 | |
沖をゆく船影一つ大夕焼 山本 信儀 | |
墓洗ふ寺解散を詫びながら 出口 凉子 | |
足し水に花びら揺らす水中花 本多ひさ女 | |
打ち寄せる波に光や海開 織田 則子 | |
夏空やひかうき雲と飛行機と 國友 淳子 | |
暗闇となりて終はりぬ庭花火 秋山 順子 | |
白桃や丸ごと人を愛したい 柳 爽恵 | |
しゆんしゆんと昭和の音し麦茶沸く 山岡 千晶 | |
神楽坂浴衣芸子の颯爽と 中山 詔義 | |
サングラスして仁王立ち五歳の子 曲田 章子 | |
捩花はまつすぐ立つてゐるつもり 二見 歌蓮 | |
山深き御倉の巌滴りぬ 塩路けい子 | |
風死せり盥に浮かぶブリキ舟 太田 鈴子 | |
いざいざと親子いくさの草矢射る 武 義弘 | |
朝顔やわが庭のへそここにあり 矢倉 美和 | |
月下美人自己主張して独りかな 森柾 光央 | |
令和4年 10月号 | |
青葉風絵とき説法名調子 名島 靖子 | |
夫看取る忙中閑の春の月 池内千恵子 | |
吊橋を引つぱつてをり蜘蛛の糸 橋本 爽見 | |
合歓の花やさしい人になりに行く 磯部 洋子 | |
明け易しこの世に長居して飽きず 森本 隆を | |
句を詠むといふよろこびの五月来る 村田 近子 | |
木道の果てなる夕日閑古鳥 須藤 篤子 | |
ささゆりや案内の巫女の裾揺れて 池田 洋子 | |
万緑の戦国城址雲流る 坂谷ゆふし | |
山一つ越せば伯耆よ麦の秋 中畑 耕 | |
白靴やこの健康のいくつまで 服部 史子 | |
道すがら尼寺を訪ふ麦の秋 籔下 美枝 | |
夕さりて鴉の声や沖縄忌 石井 紫陽 | |
八合目よりは鎖場雲の峰 皆見 一耕 | |
子供より父のよろこぶ鯉幟 坪井たまき | |
眠ることの多くなる夫沙羅の花 河村 里子 | |
過疎さらに進みてさらに蛍増え 中村 隆兵 | |
平和なる日日に感謝す麦の秋 日野 満子 | |
干すシャツのしわを伸ばせば雲の峰 栁瀬 彩子 | |
端居して遠き記憶をひもとけり 吉岡 裕世 | |
ふるさとに置き去りの夢遠き雷 市川 幸子 | |
肩書はただの主婦なり夏帽子 谷中 隆子 | |
薄暗き店に葛切り光りをり 青木 謙三 | |
雨蛙息を潜めて何思ふ 末廣 稔子 | |
髪束ね始まる一日梅雨に入る 藤井 早苗 | |
魂は天にあづけて昼寝かな 山根 征子 | |
更衣いつも元気な振りをして 東山美智子 | |
白南風や運河騒めくシャトル船 櫻岡 孝子 | |
むさし野の風にかがよふ青芒 佐藤 洋子 | |
夏蝶や追ふ幼子にもつれ舞ふ 山奥由美子 | |
誰を待つでもなき庭に水を打つ 伊藤 泰山 | |
九輪草思ひ出つきぬ山の友 田中 せつ |
令和4年 9月号 | |
山びこの声やはらかき若葉山 竹内 久子 | |
捩花を咲かせて婆の反抗期 讓尾三枝子 | |
月山にまづは一礼さくらんぼ 松尾 憲勝 | |
白地着て英雄を聴く凭れ椅子 松尾 苳生 | |
菖蒲湯の菖蒲の長さもてあまし 吉田 鈴子 | |
元気かと日日草が問うてくれ 川西万智子 | |
葉桜の蔭にひたすら素振りの子 福田真生子 | |
つれだちて越前平野麦の秋 阪田 悦子 | |
鳥声の嘻嘻と繁りの目覚めけり 西川 豊子 | |
麦秋の吹く風は黄よどこまでも 光畑あや子 | |
夕ざれにほどける色や山の藤 池田 小鈴 | |
歳月を幹に刻みて椎若葉 塩出 翠 | |
山に来て山の声聞く暮春かな 桜井 京子 | |
武蔵野に音なき雨や茄子の花 鈴木 利博 | |
誰がためや御所から嵯峨へ虹の橋 鵜沼 龍司 | |
麦秋や日輪赤く沈みゆく 太田 朋子 | |
薫風や比良の山並濃く淡く 西川 静風 | |
小でまりや小雨に白さ際立ちぬ 中森 敏子 | |
てんたう虫農夫の手首めぐり発つ 中畑 恵 | |
麦の秋乾く風吹く畦の道 川上 桂子 | |
清正の城を見上ぐる鯰かな 中山 克彦 | |
狛犬は嘉永の寄進樟若葉 戸田孝一郎 | |
烏城背に白無垢写す青葉風 石原 盛美 | |
ワンタッチ傘は花柄走り梅雨 田中 節子 | |
薔薇アーチ表札ふたつ掲げゐて 澤田 治子 | |
母の日のカーネーションの白さかな 久保木倫子 | |
島原の西門跡や五月闇 廣岡トモ子 | |
川風もいにしへぶりや賀茂祭 中間晋一郎 | |
車前草の花立ち上り轍跡 坂井 俊江 | |
鉄線を一輪外す花鋏 今泉 藤子 | |
羅の姿美し京の宵 小林 昇 | |
むらさきの透ける茄子の滴かな 肥沼 孝明 | |
令和4年 8月号 | |
蔵町の柳隠れに舟のゆく | 中野 東音 |
山内は花の盛りや東大寺 | 守屋 和子 |
藤房や風のもつれを風のとく | 北尾 きぬ |
ふらここの影遠のきて近づきて | 中島 勝彦 |
良き陽射し良き風ありて散る桜 | 新井悠紀代 |
振り向けば今日が暮れゆく山桜 | 山下 千代 |
夕暮れは何故に淋しや葱坊主 | 亀山利里子 |
空き家にも残りし屋号燕来る | 中田 節子 |
春愁や細くこぼるる砂時計 | 北尾 美幸 |
囀の重なり樹樹の明るしや | 金子 敏乃 |
花屑を銜へては吐く鯉の口 | 大森 收子 |
花の昼鎌倉彫の工房に | 馬場 久恵 |
花の雲儚きまでの昼の月 | 太田 稔 |
逃げ水を追つてハーレーダビッドソン | 萩原 胡蝶 |
ドーナツの穴の歪みや春の行く | 田中 睦美 |
朝の日を受けたんぽぽの百の絮 | 秋山 満子 |
親も子も跳ねはね過ぐる夕桜 | 岡本 清子 |
からまつて子猫眠れる膝の上 | 須﨑咲久子 |
夜具干して一夜春日の中に寝る | 中谷 廣平 |
一望の湾の内外初燕 | 田中 美樹 |
うららかや母から子への京言葉 | 柴田 久美子 |
葉桜に風の行きあふ城址かな | 増田多喜子 |
春風を少し入れたる四畳半 | 岡田 うみ |
湧き出づる湯に身をゆだね春惜しむ | 椎名 陽子 |
産土の風知りつくし紅枝垂れ | 岡本 和男 |
淀川の渡り場跡や猫柳 | 田辺 正和 |
田植機が進む緑の破線引き | 長野 泰子 |
風光るアイロン軽く滑らせて | 山村 幸子 |
野に山に光撒きゆく若葉風 | 板谷つとむ |
山伏の花の奥行く吉野山 | 鈴木とみ子 |
二年を語り尽くせぬ春の夜 | 龍川游楽蝶 |
花の昼留守は写真の夫まかせ | 出江 忠子 |
令和4年 7月号 | |
山すそに残る古民家落椿 | 千代 博女 |
余生なほ昭和に執し亀の鳴く | 高杉みどり |
タクシーの隠れて休む花の昼 | 中山 仙命 |
大樹の枝雲もろともに剪定す | 町田 珠子 |
草千里野焼の煙残る朝 | 松川ともはる |
水紋は風のあしあと春の池 | 大野布美子 |
若布刈ざくりざくりと軸を切る | 高橋 良精 |
阿修羅像眉間にひそむ余寒かな | 石浜 邦弘 |
昔昔の夢ばかり見る彼岸かな | 三村 昌子 |
立春や命生みだす黒き土 | 松井 朱實 |
人気無き浜の風紋涅槃西風 | 森 君代 |
卒業へ長き廊下をゆつくりと | 横川 節 |
春の雪とまどふ朝の動き出す | 田中 君江 |
春塵の匂まとひて帰宅せり | 天野 苺 |
丸み増す多摩の山山遠霞 | 浅見まこと |
塗り直す柵の白さや牧開 | 相良 研二 |
三月の光ゆたかに真砂女句碑 | 岡本 和男 |
昭和雛飾る明治の旧家かな | 藤原 敏子 |
親戚の子のごとく来て燕 | 寺崎 智子 |
茶筒の蓋ゆつたりと降り日永し | 和田 秀穂 |
桜餅開花予報を聞きながら | 西澤 照子 |
よき便り欲しきひと日や辛夷咲く | 出口 涼子 |
更けゆけば肌を包みし春の闇 | 中澤 朋子 |
春の夜のチェコ語で歌ふラブソング | 小國 裕美 |
オルゴールの白鳥まはる夜半の春 | 望月 郁子 |
雛あられ旅行かばんにそつと詰め | 平林 敬子 |
薄紅の烟る梢や春来る | 内藤 豪剛 |
木の芽雨ロダンの像の背のまろし | 行木 信夫 |
春寒や波呟きて山黙す | 加藤 美沙 |
かんざしの重たさうなる享保雛 | 井上美代子 |
人生に句読点あり雪柳 | 日比野晶子 |
鞦韆や風になるまで漕いでゐる | 水科 博光 |
令和4年 6月号 | |
山里に古代の神や木の根開く | 中村 優江 |
ゆるやかな時の流れや木木芽吹く | 伊藤 道子 |
料峭の仏間にひろふ供花の塵 | 廣瀬 和子 |
雪形の駒瘦せてゆく遠嶺かな | 久留宮 怜 |
ただいまの声一人づつ日脚伸ぶ | 梅原 清次 |
節分の鬼透明にして辻に | 大西 洋子 |
梅ふふむ近づいてくる人の声 | 山本そよ女 |
啓蟄や声をかぎりに赤子泣く | 西田 幸江 |
かたくりの花に雑木の影模様 | 坂戸 啓子 |
告白はしてみたかりき囀れり | 服部 史子 |
信玄の像や冬山侍らせて | 岡田 慶子 |
侘助を小壺に活けて客を待つ | 石堂 初枝 |
手作りの雛と共に籠りをり | 山田 和江 |
地下駅へ下りる靴音冴返る | 森田 真弓 |
杖をつく母と揃ひの春帽子 | 間部 弘子 |
太極拳春の扉を押し開く | 武田 捨弘 |
雛菊の咲きて長姉の誕生日 | 佐野 弘子 |
雛飾る子の来るあてはなけれども | 泉 葵堂 |
父の手を離れ子の凧上がりけり | 山岡 千晶 |
道沿ひに使者の顔あり蕗の薹 | 上田 古奈 |
まだ春になりきれぬ雲をちこちに | 本多ひさ女 |
梅の香や障子に映る枝の影 | 高見 香美 |
乗り継いでまたのりついで雪の駅 | 奥本伊都子 |
子等巣立ち一人ぼつちの福は内 | 澤野須美子 |
川下へ細波光る余寒かな | 村岡 和夫 |
黄昏の白梅淡く暮れ残る | 樋口 光男 |
うたた寝の露座仏囲む蕗の薹 | 田端加代子 |
春の空雲にとどけと立つ煙 | 中平嘉代子 |
春を待つ孫はパジャマにランドセル | 梶本 圭子 |
手水舎の雪解雫の光落つ | 中島 文夫 |
猫の抜け膝の子の抜け春炬燵 | 小倉 和子 |
かばんから春を小分けに旅土産 | 栁澤 耕憲 |
令和4年 5月号 | |
黙長き山をそびらに寒牡丹 | 北尾 鈴枝 |
透きとほる朝の静寂や梅ひらく | 甲斐 梅子 |
ふるさとの山河まぶたに春を待つ | 上達 久子 |
くくり紐逃れて犬の恵方道 | 福田 圧知 |
野良猫を追はぬ日と決め漱石忌 | 森本 隆を |
神鈴のくぐもる音や雪舞へり | 田中 京子 |
冬日向鳩と一緒に群れにけり | 島本 方城 |
マフラーの渦中にありてながらへて | 松尾 憲勝 |
髪型に名前のありて明の春 | 𠮷田 鈴子 |
寒椿ひたすらと言ふことばふと | 清水山女魚 |
永らへて八十八の初手水 | 岡村祐枝女 |
夕千鳥波が消しゆく足の跡 | 福田真生子 |
野良猫ののそと見廻る四温かな | 吉瀬 秀子 |
しづり雪竹林すくと目覚めけり | 塩出 翠 |
若水の柄杓に掬ふ光かな | 島松 岳 |
人日や生かされし身を慈しむ | 森本 安恵 |
初富士やこの地に住むと決めた日も | 鵜飼 三郎 |
亡き友の着信歴を冬の夜 | 高橋 浅子 |
父と児の楽しい時間雪だるま | 北村加代子 |
注連作り夫の指先荒れてをり | 田中 恒子 |
車窓より雪の白山走り出す | 梅田喜美惠 |
足跡の道になりゆく今朝の雪 | 新庄 泰子 |
マンションの段のぼり降り手毬唄 | 田辺 正和 |
忘れえぬ思ひ出多し毛糸編む | 吉岡 裕世 |
年神を案内申すか明烏 | 戸田孝一郎 |
襟たてて屋台の隅に年忘 | 中島 三治 |
鼓動さへ聴こえくるかに弓始 | 小畑 順子 |
一番機初日を乗せて今したち | 伊藤 泰山 |
風花の跡を残さず消えにけり | 名嘉 法琉 |
湯たんぽに名前をつけてかはいがり | 矢倉 美和 |
寥寥と今日の命を冬の蝶 | 澤田 治子 |
靴下買ひ寒卵買ひ母見舞ふ | 山本知恵子 |
令和4年 4月号 | |
採り終はり眠りに入るみかん園 | 名島 靖子 |
かたくなになつてはゐぬか花八つ手 | 橋本 爽見 |
大根煮て余生楽しむ心持 | 竹内 久子 |
神迎ふ日の帯を引く朝の海 | 村田 近子 |
初富士へ一歩一歩の渚行く | 杉山 通幸 |
置物の熊動きさう暖炉の火 | 小野田紀久子 |
生きて居ることが仕事よ日向ぼこ | 山下 千代 |
志す事一つ欲し去年今年 | 川西万智子 |
冬蝶や庭にぽつんと石の臼 | 坂谷ゆふし |
父と子は蝶ネクタイやクリスマス | 梅原惠子 |
日向ぼこ時折遠に目を休め | 籔下 美枝 |
短日の乾田走る雲が影 | 山田 正弘 |
お干菓子の口溶けはやし冬の虹 | 池田 小鈴 |
大空へ杵たかだかと餅を搗く | 伯耆 惟之 |
つつましき暮しの中の師走かな | 隅山 久代 |
寒き夜言葉の在庫かき集め | 萩原 胡蝶 |
マスク取る老い偽りのない鏡 | 高岡ひろみ |
大枯野日当たる底を郵便車 | 中畑 恵 |
冬ぬくし人待つ駅に木のベンチ | 谷中 隆子 |
合鍵を大家に戻し晦日そば | 秋山 順子 |
踏切の向かうに見える年の暮 | 柳 爽恵 |
冬ざれの野に一条の光あり | 川上 桂子 |
背伸びして心新たに冬至かな | 國友 淳子 |
日向追ひ座蒲団寄せる冬座敷 | 田中 美樹 |
初雪や辰巳芸者の蛇の目傘 | 中山 克彦 |
ゴッホ展出て黄葉のカフェテラス | 佐藤 洋子 |
冬日向心の陰の薄らぎぬ | 太田 鈴子 |
年惜しむ画面の母は手を振りて | 奥田 清子 |
住みにくき世に猫とゐて漱石忌 | 武 義弘 |
街路樹にかかるオリオン子の忌日 | 東山美智子 |
朝靄より船影走る冬隣 | 藤沢 道子 |
蒼穹へ石段二千散紅葉 | 涌井 久代 |
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